あなたがわたしにくれたもの
「お前さぁ…テスト期間中なんだろ?大丈夫なのか?」
「テストなんて年に何回もあるじゃねぇか!でもサンジの誕生日は年に1回なんだぞ?」
「そりゃそうだけどよ…」
平日の昼過ぎ、本来ならルフィはまだ授業を受けている時間だ。
しかしサンジの誕生日である今日は学年末考査の期間中らしく、午前中に3教科の試験を終えたルフィは、そのままサンジを所謂デートに誘った。
勿論サンジもそれを僅かながら期待して仕事を休んでいたのだが、ルフィが学生の本分を忘れているのではないかと、出来の悪い子を持った保護者のような気持ちでいるのもまた事実だった。
サンジに何をプレゼントすればわからなかったため、ルフィはとりあえずショッピングモールの中にあるショップへと向かった。
モノトーンを基調としたシャープなラインが特徴のこのブランドの服は、サンジが好んで着ているものだ。
確かにサンジに似合いそうな服がたくさん並んでいるのだが、どれもこれもルフィの小遣いの範囲で買えるような額ではなかった。
「高…っ!Tシャツのくせに…」
「だから言っただろ?プレゼントなんていらねぇからさ」
「でもせっかく誕生日だし、サンジに喜んでもらいてぇのに…」
その気持ちだけでサンジは十分に嬉しいのだが、それを口に出して言えるほど素直じゃない。
何とかしてルフィも自分も納得できないかと暫し考えたサンジは、急に思い立って服を選びだした。
「おいルフィ、これ着てみろ」
「え?俺?何で?」
「俺がお前に服買ってやるよ」
それじゃ逆じゃねぇか、と口を尖らせるルフィを、サンジは問答無用で試着室へと押し込んだ。
「…肩こりそうなんだけどこの服…」
試着室のカーテンが開いた瞬間、サンジは息を呑んだ。
普段のパーカーにジーンズというラフな格好とは一変して、かっちりとしたジャケットに身を包んだルフィは大人びて見える。
似合わなかったら笑い飛ばしてやろうという目論見は大きく外れ、サンジは暫しその姿に見惚れていた。
「…お、おい、今度はこっちの服着てみろ」
「え〜、またかよ…」
雰囲気の違うルフィを見るのが楽しくて、サンジは次々と服を選んでは試着させた。
最初は不服そうだったルフィも、サンジがあまりにも嬉しそうに自分のことを見るので、自分まで何だか嬉しくなってしまう。
結局サンジはその店でルフィの服ばかり4着も購入した。
そのうちジャケットとタートルネックのカットソー、細身の黒いレザーパンツは、現在ルフィが着ているそれだ。
自分好みのファッションに身を包んだ恋人と並んで歩くのが、サンジにとっては何よりも嬉しかったらしく、上機嫌で鼻歌を口ずさんでいる。
サンジへのプレゼントが買えなかった悔しさは残るものの、サンジが喜んでくれたのだから別にいいか、とルフィも納得した。
同じブランドの服に身を包んだ2人に、すれ違う女子高生やOLたちが視線を投げる。
サンジは元々目立つ容貌だし、ルフィもまた決してモテない顔ではない。
それは先日のバレンタインの成果でも証明されていた。

自分の愛する男であるルフィを見せびらかして歩きたいような、逆に誰にも見せずに独り占めしたいような、複雑な心境にサンジは戸惑う。
早く2人きりになりたくて、サンジはガラス張りの壁から見える屋上の観覧車を顎で指した。
「ルフィお前、あれ乗りたいって言ってなかったっけ?」
「観覧車か!乗りてぇな〜」
「…じゃあ今から乗るか?」
本当に今観覧車に乗りたいのは自分自身なのだけれど、それをあたかもルフィが希望したようにすり替えるあたり、自分はずるい人間だと少しだけ自己嫌悪に陥る。
それでも2人だけの空間を早く得たくて、サンジはルフィと少し足早に観覧車へと向かった。
「2人で1,000円か〜、高ぇな〜」
「これが普通だって…いいから乗るぞ」
晴れた休日にはカップルが長い列を作るこの観覧車も平日の夕方は客が少ないらしく、並ぶことなく乗ることができた。
ドアが閉められ、ルフィとサンジは漸く2人だけの世界に浸る。
「観覧車って好きなんだけどさ、イライラするよな!」
「…何で」
「だって前のゴンドラには絶対追いつけねぇじゃんか…まるで俺たちの年の差みてぇに」
サンジの向かいに座っていたルフィはそう言うと、席を立ってサンジの隣に移動してきた。
ゴンドラが少しだけ傾いたような気がして、元々高いところがあまり得意ではないサンジは背中に冷や汗をかいてしまう。
それに加えて近づいてくるルフィの顔が、着ている服のせいかやけに大人っぽく感じて、サンジは息が詰まりそうな感覚を覚え後ずさりした。
「バカお前っ、2人ともこっちに座ったら傾いて落ちちまうだろうが!」
「サンジこそバカだろ…そんくらいじゃ落ちねぇよ」
そうこうしてる間にもゴンドラの高度はどんどん上がっていった。
サンジは恐怖のあまり窓の外を見ることができずにそのまま固まっている。
そんなサンジの様子がおかしくてふっと笑ったルフィがサンジの横に腰掛けると、ゴンドラが僅かに揺れて、サンジは思わず「ひっ」と引きつったような悲鳴を上げてルフィの肩にしがみついた。
「あはは、サンジ昔から木登りとか苦手だったもんな〜…俺は好きなんだけど」
「バ、ババババカと煙はっ、高いとこに上るんだよっ」

すっかりうろたえてしまったサンジの身体が小刻みに震えているのが伝わってきて、ルフィはサンジが愛しくて堪らなくなる。
今日19歳の誕生日を迎えたというのにまるで子供のように抱きついてくる可愛い年上の恋人。
やっぱり好きだ、と再確認して、ルフィはサンジにそっと口付けた。
「目ぇつぶってれば、怖くないだろ?」
「ん…っ」
ゆっくりと回る観覧車の中で、少しずつ残り少なくなる2人きりの時間を惜しむような熱いキス。
目を閉じたサンジの頭の中は真っ白になる。
不安も恐怖も全て奪い去ってしまうルフィの力強い抱擁に身を委ね、サンジもその愛に応えようと懸命に舌を絡めた。
「あ、うちの学校見えた」
「んぐっ、目…開けてんじゃねぇよっ」

キスの最中だというのにルフィはよそ見をしていたらしい。
今起こるすべての事を楽しもうという姿勢はさすがルフィだが、自分だけが目を閉じてキスに集中していたのが急に恥ずかしくなって、サンジはルフィを押し退けた。
「何だよ、もうちょっとキスしようぜ〜」
「…もう下に着いちまうだろ…係員のおっさんに見られたらどうすんだよ」
「ん?いいだろ〜って自慢する」
「………バカ野郎」
そんなくだらない会話を交わしているうちにゴンドラは降り場へと差し掛かる。
最後の最後に掠めるだけのキスをして、2人は観覧車を降りた。
ショッピングモール内のイタリアンレストランで食事を済ませた頃には、時計は夜8時を回ろうとしていた。
普段ならばこのままサンジの部屋に向かうところなのだが、まだ試験期間中であるルフィは家に帰って勉強しなければならない。
「ちぇっ、サンジの家泊まりたかったのによ」
「駄目だって…お前勉強道具も制服も持ってきてないだろ」
急に保護者面になったサンジにたしなめられて、ルフィは面白くない。
しかしまだ終電までは時間があるからと、サンジの手を取って向かったのは、高台に位置する公園。
街を見下ろすこの公園は夜景が綺麗なことで有名で、格好のデートスポットになっている。
いちゃつくカップルたちから少し離れたベンチに腰掛けると、そこは植え込みで隔離されており、2人の世界を作るには格好の場所だった。

「うはー、綺麗だな〜」
夜景を楽しむルフィの横顔を見ながらサンジは気が気ではなかった。
どうしてもルフィの成績のことを心配してしまって、純粋に恋人同士の時間を楽しめない。
ルフィもサンジのそんな様子に気付いており、残された時間に集中してもらいたくて、わざと腰に手を回したり耳元に息を吹きかけたりしている。
茂みで隠れているとはいえ、近くに他人がいる状況、しかも屋外でいちゃつくことに抵抗があるのか、サンジはそんなルフィの手を懸命に払う。
ルフィは焦っていた。
2人でいられる時間はあと僅か。
サンジの肌に触れないまま家に帰っても、勉強になんか集中できない。
今ここで、サンジを抱きたい。

噛み付くようなキスをしながら、腰に回っていたルフィの手が前に回って、サンジの胸元へ滑り込んだ。
まさかこんな場所でルフィがこういう行動に出ると思ってなかったサンジは、目を白黒させたまま抵抗することも忘れている。
いつもより乱暴に乳首を摘まれ、上ずった声が漏れた。
「ちょ、ルフィ…こんなとこで…っ」
執拗な愛撫を受けながらもサンジはやはり場所のことを気にしているらしく、零れそうになる声を必死に堪えている。
しかしいつもと違うシチュエーション、時間が限られているという焦燥感、そして大人びたファッションに身を包んだルフィ、これらの要素がサンジの興奮を駆り立てているのも確かだった。
「だめ…ルフィ…っ」
「俺だって駄目だ…も、我慢の限界…」
逸る気持ちは抑えきれない。
ルフィは自分のズボンを膝まで下ろすと、勃ち上がった自身をサンジの手に握らせた。
「な…サンジ、俺…したくてたまんねぇんだ…」
「う…」
自分のそこも同じ状態になっているとは言えず、サンジは無言でルフィ自身をそろそろと撫でる。
欲しい気持ちと、場所を考えて躊躇してしまう気持ちがサンジの中で戦っていた。
こんな屋外でも欲情してしまう自分自身が恥ずかしくて、でもその気持ちを素直に出せるルフィがどこか羨ましくて。
戸惑っている間にもルフィの手はサンジの服を捲り、中心の膨らみに触れてくる。
「ほら、サンジも…勃ってる…」
「違う…っ、だから、駄目だって…」
口でいくら抵抗の意思を表しても、それをルフィが聞き入れるはずもない。
焦りを隠せない乱暴な手つきでサンジのズボンを緩めると、そのままサンジの身体を引き寄せて自分の膝の上に座らせた。
目の前に広がる夜景に向けて股間を晒す姿勢にサンジは赤面する。

心にブレーキをかければかけるほど、興奮は高まっていく。
閉じかけた膝を強引に左右に割られ、唾液で濡らしたルフィの指が後孔へ挿し込まれた瞬間、サンジの身体がびくんと飛び跳ねた。
「や、あ、あぁ、だめぇ…っ」
「なあ、もう…挿れたいんだけど…」
サンジが何を言ってもどうせ挿れる気なのだろうが、一応確認を取るところがルフィなりの優しさなのだろう。
勿論今の状態で止められてもサンジも困ってしまうのだが、素直にYesとは言えずただ喘ぎを堪えるばかりだった。
答えがないのを承諾の意味だと勝手に解釈して、ルフィはサンジの腰を持ち上げ後孔に狙いを定めた。
少ししか慣らされていないそこは緊張して窄まっているが、ルフィ自身はお構い無しにそこを押し広げていく。
痛くて、苦しくて、でも満たされる。
この痛みを我慢すれば、その先には極上の快感が待ってるから。
「ぃやぁっ、声、聞こえ…ちゃうぅっ」
「サンジの声、可愛いもんな〜…聞かれたら困るよな」

ルフィはそう言うと、抽挿を繰り返しながらサンジの身体を回転させて自分の方を向かせた。
引き攣れた内壁が捩れて意外な性感帯を見つけ出し、サンジは声を堪えるのに必死だった。
夜景に背を向けたサンジは視界にルフィが入ったことで安心したのか、その首筋にしがみつく。
自分好みの服装に身を包んだルフィがいつもの数倍男前に見えて、高まる鼓動を抑えきれなかった。
「誕生日おめでと、サンジ…」
「んっ、はぁあっ、っあ、あぁああっ」
こんな時に誕生日を祝われても、返す言葉など出てくるはずもない。
何か言おうとしても口の端から漏れるのは甘い嬌声だけ。
ルフィの肩越しに、茂みの向こうのカップルが小さく目に映る。
こんな近くに誰かいる状況でルフィに抱かれたのは初めてで、駄目だ駄目だと思いつつも身体は快感に溺れ、腰が独りでに動いてしまう。
荒い息も、擦れ合ったところから漏れる淫らな水音も、誰かに聞かれているようで、いけないと思う気持ちとは裏腹に絶頂は近づいていた。

「もぉ、っやぁあっ、はぅうんっ、イ、くぅうっ」
「ちょっと待てサンジ、こっち向いてたら服汚れるっ」
せっかくサンジに買ってもらった服を汚すわけにはいかない。
ルフィは慌ててサンジの身体をぐるっと回し、もう一度夜景の方向へと向かせる。
その瞬間内壁が思い切り抉られ、サンジはその刺激で絶頂を迎えてしまった。
ベンチの下の芝生に向けてサンジが白濁を吐き出している間に、ルフィもまたサンジの中で果てた。
どくどくと注ぎ込まれる欲望の塊に押し出されるように、サンジの先端からは残りの迸りがとぷ…っと溢れ、硬い幹を滴り落ちた。
「じゃあな、帰ったらちゃんと勉強しろよ」
「ほーい」
「服も皺にならねぇようにハンガーにかけるんだぞ」
「…何かサンジ、母ちゃんっぽい」
面倒見のいいサンジはどうしてもこういう時保護者の顔が出てしまう。
本当なら「今日はありがとう」とか「次はいつ会おうか」とか、恋人同士らしい会話を交わすべきなのだろうけど、照れ屋な性格も手伝って素直な気持ちを口にすることはできない。

「今日はありがとな、俺からプレゼントは渡せなかったけど…また今度」
「別にいいって…」
「ししし、愛してるぞ!」
「…!」
頬を赤らめたサンジは誰かに聞かれてやしないかと周囲を見渡す。
そうしているうちにルフィは手をひらひらと振りながら改札の中に入ってしまった。
ルフィはずるい。
いつも俺が言えないことをさらっと言って、俺に返事の隙を与えない。
俺が素直になれない分ルフィが素直だから、うまくいってるのかもしれないけれど。
遠ざかるルフィの背中をいつまでも見送りながら、サンジは言えなかった言葉を心の中で呟いていた。
ありがとうって言いたいのは俺の方だ。
プレゼントなら、もうお前からいっぱいもらってる。
喜びも、幸せも、楽しいことだらけの今日一日も、…くすぐったいキスも、………恥ずかしいけど気持ちいいセックスも。
俺はこれだけ満たされてるのに、それ以上に求めるのは我侭だよな。
今度会ったらルフィより先に言ってみようか。
愛してる、って。
なにが言いたいのかあとがき…→